どんなシロアリ?
北米原産の外来種です。カンザイ(乾材)シロアリの名前の通り、家の柱、家具や建具といった乾燥した木材に巣を作ります。現時点で生息数は多くありませんが、有効な予防法は無く、日本では根本的な駆除が非常に困難な種です。
アメリカカンザイシロアリの特徴
同じシロアリとはいえど、アメリカカンザイシロアリには、日本の代表的なシロアリとは大きく異なる点があります。アメリカカンザイシロアリの特徴をご紹介します。
空を飛んでやってくる
日本のシロアリ対策といえば、代表的なものに、家屋の床下に薬剤を散布して害虫からのバリアを貼る「バリア工法(ケミカル工法)」、家屋の外周に機材を埋め込みシロアリを監視する「ベイト工法」がありますが、どちらの工法もシロアリの侵入経路が土壌からであることを前提とした工法です。
しかし、アメリカカンザイシロアリは、地下からではなく空を飛んで、軒先や開口部などあらゆる場所から家屋内に侵入します。在来種のように地下に巣を作ることはありません。日本のシロアリ対策の常識を根底から覆すシロアリです。
水が無くても生息できる
日本のシロアリは水が無ければ生きていけません。
在来種のうち、日本全国に分布しているヤマトシロアリは、主に水分の供給が豊富な土壌近くで活動します。イエシロアリは水分を運ぶことができるため、二階や屋根裏にも出張しますが、それでも自由自在に家屋内を食い回るわけにはいきません。両種とも液体状の水分の供給がある場所でしか生息できないのです。
アメリカカンザイシロアリは、液体状の水を必要としません。乾材シロアリの名のとおり、乾いた材木の中に含まれるわずかな水分があれば生息することができます。そのため被害は水廻りなどに限定されません。
活動の目視が困難
日本のシロアリは蟻道と呼ばれる通路を作り、その内部を移動します。どこからどういうルートで家屋内に侵入し、どういった場所を食害しているのかが目視で確認できる場合も多くあります。
しかしアメリカカンザイシロアリは滅多に蟻道を作らず、材木の内部を食べながら穿ち、その中を移動します。材木の内部を移動するため、目で見ただけでは存在を特定することができません。木材の表面には一見して異常が無く、どこまでの範囲が侵されているかの判断が難しいため、完全に調べるには、壁や天井をすべてはがして見なくてはなりません。
また、家屋内のあちこちにコロニー(巣)を多数作るため、巣ごと駆除するためには、家中を隅々まで調べなければなりません。
材木をのこさず食べる
日本のシロアリは年輪に沿って材木を喫しますが(年輪の部分は日本のシロアリにとって固くて食べにくい)、アメリカカンザイシロアリは年輪など無関係に材木の内部をぽっかり空洞にしてしまいます。建材の耐久性に与える影響は恐ろしいものがあります。
3%の食害で耐久性は30%落ちるといわれていますので、ある日突然家が倒壊する危険性も・・・。放っておくことなどもってのほかで、早期発見・迅速対処しなければなりません。しかし・・・
有効な対処法をとることが困難
現在、このアメリカカンザイシロアリに最も有効とされているのは、家屋全体のガス薫蒸処理です。本場アメリカではこの方法が取られています。 しかし日本の宅地は家と家が密集しすぎているため、薫蒸処理を行うことができません。
また、仮に薫蒸処理で家屋内のアメリカカンザイシロアリを一掃したとしても、薫蒸処理には予防効果が無いため、近隣の家にまだ生息している固体がいるならば、それらが再び侵入し被害に遭う可能性があります。
完全な駆除を目指すならば、街全体で一斉に駆除を行わなければならず、近隣の住民の方の理解や自治体の努力が必要となります。
早期発見が重要! 発見のポイント
アメリカカンザイシロアリは、ひとつひとつのコロニー(巣)の規模が小さいため、短期間のうちに致命的な被害に発展することは少ないでしょう。コロニーの数が少ない初期の段階で駆除することが何よりも重要です。
発見の手がかりとなるのは・・・
糞の発見
被害のある箇所の付近に砂のような顆粒状の糞を確認することができます。 天井からぱらぱらと降ってくる・部屋の隅に積もっているといった症状がみられますが、ほとんどの人はそれがアメリカカンザイシロアリの糞とは気づかずに掃除してしまい、発見が遅れてしまいます。
左の写真のような砂粒状のものを発見したら、すぐにお近くの専門業者に相談してください。巣の数が少ない初期段階で発見することができれば、根絶も不可能ではありません。日本の場合、住宅の薫蒸処理ができないため、主に木材への穿孔・薬剤注入といった処置になると考えられます。
これからのシロアリ対策
さて、アメリカカンザイシロアリは本来、日本には生息していなかったシロアリです。一体どうやって日本に渡ってきたのでしょうか?
詳細な被害分布図を見ると、アメリカからの船が出入りする地域における発生が多いことがわかります。長崎県では佐世保市で生息が確認されています。 輸入品の家具などにアメリカカンザイシロアリが紛れ込んでいたケースが多いようです。
急速なドル安という現在の為替状況もあり、アメリカからの輸入がより活発になることで、さらに多くのアメリカカンザイシロアリが日本へ渡ってくることが予想されます。その上、日本の住環境に適応した有効な対処法が開発されていないこの現状を鑑みると、まだ生息数は少数とはいえ、事態は逼迫していると言えます。いま、日本独自の新たな対処法を早急に開発することが求められています。
私たちの取り組み
アメリカカンザイシロアリへの対策として、私たちは以下の取り組みを行います。
注意喚起
アメリカカンザイシロアリの駆除は、何よりも早期発見が大切。そのためには、地域住民全ての皆様が、シロアリ対策やご自身の家屋の状態への関心を失わず、点検を怠らないことが大切です。 三和技研では、アメリカカンザイシロアリへの注意喚起の活動を行うとともに、点検を実施しています。
新たな防除システムの研究開発
今後、アメリカカンザイシロアリは徐々に生息数を増していくことが予想されます。アメリカカンザイシロアリ対策は、今後のシロアリ防除業界において最重要課題のひとつとなるでしょう。 三和技研は、シロアリの生態を応用した「ベイト工法」を国内でいち早く本格導入し、さらにそのシステムを自社で研究し改良を重ねてきました。今後は、アメリカカンザイシロアリ対策を視野に入れた新システムの研究開発を行います。
私たち三和技研は、国内におけるベイト工法の先駆者としての自負と責任を抱き、日本におけるアメリカカンザイシロアリ対策に全力をもって貢献して行きたいと思っています。